とある大学の看護学科で行われていること(1)

最近「スピリチュアル」な世界をビジネスの視点で読み解くというジャンルの本を立て続けに2冊読みました。
「霊と金―スピリチュアル・ビジネスの構造―」櫻井義秀著

「スピリチュアル市場の研究」有元裕美子著

両方とも非常に興味深い本ですが、感想文は他の優れたレビューに譲るとして…。
(以下、例によってダラダラと長い文章ですが最後までお付き合いいただければ幸いです)

このエントリを書こうと思ったのは「スピリチュアル市場の研究」という本の中で取り上げられている一つの事例に、私のひっつきもっつきセンサーがビリビリと反応したからなのです。

「大学の正規カリキュラムに組み込まれたヒーリング講座」(P89)

このヒーリング講座を取り入れたのは、福岡県立大学看護学部です。ヒーリングの教育・実践をしているのはアドラー・コリンズ慈観准教授という人で、大学付属のヘルスプロモーション実践研究センターでは、学生への教育の他に地域住民へのヒーリングセッションやアロマオイルマッサージを提供したり、ヒーリング講習会も行っています。

福岡県立大学の資料(PDF注意)http://www.fukuoka-pu.ac.jp/academics/nurse/files/jeken.pdf によるとアドラー・コリンズ慈観准教授は英国正看護師・救急救命士、教育学博士という肩書きの他に真言宗の僧侶でもあるのだそうです。先に挙げた本には、その他にも英国にて各種代替医療のライセンス取得(メディカルアロマセラピスト、フラワーエッセンス 、クリスタルヒーリング)とあり、いろいろマルチに活動されているようですね。

ヒーリングにも色々ありますが、アドラー准教授が教えているのは「ヒーリングタッチ」というものです。

http://hcpro.sblo.jp/article/32123655.html

7月に行った「第1回日本ホリスティックナーシング研究会」で講演をしてくださったアドラーコリンズ慈観先生から文部科学省認定の「ヒーリングタッチ」を学ぶことができることになりました!
(改行位置を変更しました)

ヒーリングタッチとは、1980年に米国の看護師ジャネット・メンゲンによって開発された、健康と癒しのためのエネルギーフィールドを整えるセラピーなのだそうですが、どうも気功の一種のようですね。前掲書にはヒーリング(気功)と書かれておりました。
それにしても「文部科学省認定のヒーリングタッチ」という表現はあざとすぎるんじゃないでしょうか。福岡県立大学がこのカリキュラムを取り入れたことをもって文科省認定というのはいかにもこじつけでしょう。

おまけ:
なかなか味わい深いので「日本ホリスティックナーシング研究会」の顧問、発起人の名簿へのリンクも貼っておきまする。
http://www.jhna.jp/hokkininn.html 

また、看護学科のHPには

「ヘルスプロモーション実践研究センター」においては、エビデンスに基づいたヒーリングの教育を行うと同時に、地域貢献として、地域住民の方々へも実践力をつける活動を続けています。

などと目をむくようなことが書かれており、思わず「エビデンスがあるなら見せてみんかい!」と、普段は使わないような汚い言葉が口をついて出そうになりました。いやいや、本当にあるなら見てみたいと思うんですよ。

これをお読みいただいている方の中には看護学科で気功を教えて何が悪いといわれる向きもあるかもしれません。しかし私には、看護師として身につけなければならないことが、気功より他にもっと沢山あるように思えてなりません。時間もお金も限られているんですから。ましてや、県立大学ですしね。

アドラー・コリンズ准教授のことを検索していて、もっとすごい人を発見してしまって。。。
実は、そっちの方がこのエントリーのメインだったりします。\(-_-;)

長くなりましたので分けます。

とある大学の看護学科で行われていること(2)

福岡県立大学看護学科付属ヘルスプロモーション実践研究センターのセンター長は佐藤香代教授です。こちらのプロフィールが分かりやすいので引用します。
佐藤 香代先生 / 女性のからだは賢い。 自分の身体とコミュニケーションをとろう!

福岡県立大学 看護学部 女性看護学助産学 教授
テームズバリー大学大学院(英国)留学。北里大学大学院修了(看護学博士)。研究テーマは、身体感覚で、96年より「身体感覚活性化(世にも珍しい)マザークラス」による妊婦の内面的変容過程に関する研究や、からだで感じる出産や性教育の提唱など、身体感覚に焦点を当てた健康ケアモデルの開発を行う。フムフムネットワーク代表。福岡市出身。

プロフィールの中から「身体感覚活性化(世にも珍しい)マザークラス」というものを、まずは見てみることにしましょう。

第13回「世にも珍しいマザークラス in 福岡」のご案内 
かつて「母親学級」と呼ばれていた、妊婦を対象とした講習会のようなものです。レッスン6まであり2〜3週間に1度の割合で行われます。カリキュラムのうちいくつか気になる点があるので、検討してみようと思います。『毎回、レッスン時には からだがゆるむ気功 を行』うのだそうですが、長くなるのでツッコミは省略。

レッスン1 2/5(木)息を感じる 触って感じる 【呼吸、出会いゲーム 】
♪知り合う、触れ合う、語り合う〜自己紹介、ブリージング、ハグを通して〜

ブリージングってなんでしょう?ジャパンブリージング協会のサイトから引用します。

ある一定の呼吸を行うことによって潜在意識に抑圧された感情の解放が行われ、私たちの持つ過去のトラウマとそこから発生する観念を解消することができます。感情の解放には、ブリージング以外に瞑想・催眠等の方法もありますが、それらに比べブリージングの効果は 大変具体的且つ明確で、問題が解消された実感を得ることができます。

呼吸法のようですが、過去のトラウマがそんなに簡単になくなるなら苦労はしません。簡単に「○○が治ります」というような療法は避けた方が無難だと私は考えています。

レッスン2 2/19(木)食で感じるわたしのからだ 【呼吸、食の体感(試食)、クイズ】
      赤ちゃんも喜ぶ〜からだがほしがる食事って・・・。
      野菜のエネルギーを引き出す慰安端レシピ

 「慰安端レシピ」というのは調べてみたけれど分かりませんでした。どなたかご存じの方はいらっしゃらないでしょうか?(情報求む)

※コメントで教えていただきました。ありがとうございます。
簡単レシピ」のミスタイプだとのこと
http://www.fukuoka-pu.ac.jp/academics/nurse/2011-0727-1901.pdf

仕方がないので分かるところから見てみますね。このHPの下の方にレッスン風景の写真が載っています。レッスン2の写真に注目すると、講師の後のホワイトボードに「身土不二」と筆で書かれた紙が貼ってあるのが見えます。講師は佐藤香代教授です。佐藤教授ご自身も玄米菜食を実践していらっしゃるそうですし、この講座でも玄米のおにぎりや野菜の沢山入った味噌汁などが饗されるのだそうです。

助産学・・・助産師の養成・・・身土不二・・・玄米菜食・・・
こういうキーワードを見ると、ついマクロビとか食養を思い浮かべてしまいますね(どらねこさんのおかげです)。実際のところ講座で教えている玄米菜食がマクロビかどうかは分かりませんが、医療者向けの「マザーズクラス」の研修では

私たちの食のクラスは、“身土不二”と“ヒトの食性”をテーマとしています。今回はその食のクラスで行っている1つの企画「おにぎり体感」を行いました。(中略)
 ゆっくり飲み込んだら、食への感謝の気持ちが自然と「いただきます」という言葉になりました。グループに分かれてマクロビ弁当をいただきます!お弁当を味わいながら、さまざまな場所から集った助産師たちの話が弾みました。

マクロビ弁当を食べてますね。他の研修でも、マクロビ・スィーツとかマクロビ・クッキーを食べることで、マザーズクラスの体験をしてもらうという記述がありました。ともあれ、助産院でマクロビや玄米菜食を勧められてヘビーにのめり込まれる方もいらっしゃるので、大学教授が直に教えるということの重みを私などは考えてしまいます。

参考:玄米菜食と助産院その結びつきは?ーとらねこ日誌

上記の医療者向けの研修、実は参加者の殆どが助産師です。また、佐藤教授は「全国助産師教育協議会」の理事であります。
全国助産師教育協議会理事名簿


非常に前置きが長くなりました(え?)。やっと核心にたどり着けました。
県立大の教授であり全国の助産師を教育する立場にある人の、以下のような言動を見て皆さんはどう思われるでしょうか?

すこやかMESSEGE夏4「からだは賢い。自分の身体の声を聴き、信じましょう。」から抜粋(魚拓

『乳酸菌生成エキス』は、妹からすすめられました。
無農薬大豆と乳酸菌でつくられており、人工的ではないところが気に入りました。
(中略)
腸は消化吸収はもちろん、免疫と関わっていたり、酵素をつくったり、デトックスの働きもありますからね。
本当に大事な臓器だと思います。
(中略)
特に妊婦さんは気づかってほしいですね。
最近羊水が汚れているとか、シャンプーのにおいがするとかいろいろなところで耳にします。
それに、妊婦さんは、ホルモンの関係や子宮が大きくなって腸の蠕動運動が抑制されるため、便秘になりがちです。
それでこの『乳酸菌生成エキス』を飲んでいただいたら好転するのでは
ないかと思い18人の妊婦にモニター調査をしてみたところ、予想以上の結果がでました。
(中略)
9月にその結果を学会で発表しようと考えています。すこやかMESSAGE 冬号で詳しくご紹介致します。
(改行位置を変更しました)

この文章が載っているのは、智通(乳酸菌生成エキス)なるものを売っているアムネットという会社のサイトです。商品の効能を謳う代わりに、著作物からの引用などで消費者の不安を煽るような文章がそこここに見られます。いくつか例を挙げてみます。

上記サイト「健康のキーポイント」より
ガン再発はなぜ?

『ガン免疫力』安保徹 著 大和書房(新潟大学大学院医学部教授)
〜抜粋して引用しております〜(中略)
 ガンの再発が多いこと自体、今おもに行なわれている手術、放射線、抗ガン剤という三大治療が、かえってガン治療に逆効果だということを
示しています。

この号だけでなく安保徹氏の本からの引用は方々に出てきます。


ガンの治療をするか?しないか?

ガン治療をするか?しないか?は本当に個人の選択になりますが
元気で意欲も好奇心もたくさんある方が、急に闘病すると最期までの時間が早いように思います。

病気の治療は、お医者様が促すままではなく自分自身で、勉強し情報を収集し選択してもらいたいと思います。

がん治療をすると早死にするそうです(棒)。


ヒブワクチン(Hib)と小児用肺炎球菌ワクチン

予防接種こそ!

保護者がしっかりと見極めをし何が必要で?何が必要でないか?
確認をしていただきたいと思います。

今回のセミナーで
予防接種の ???もお話してもらいたいと思いますね。

サイトのみならずセミナーでは予防接種を忌避させるような話をしている様子です。この業者がどのような商売の仕方をしているか、これらを読んだだけでも分かるのではないでしょうか。


先に引用した佐藤教授の文章については「羊水からシャンプーのにおいが」などと言っている時点で医療従事者とも教育者としてアウトだと思います。しかも、自分が関わっている妊婦さん達に、このような商法で売っている商品のモニターをさせ、なおかつ結果を学会発表し、その上このサイトで結果を公表するつもりでいるらしい。こういう人を「御用学者」と言います。

助産師によってビタミンKの代わりにホメオパシーレメディーを投与された赤ちゃんが亡くなった事件は記憶に新しいですが、教授でさえこうであるならば、ニセ科学や(意味のない)代替医療に傾倒する助産師が多数いるのも、ある意味うなずける話なのかもしれません。

今回はオチがなかった\(-_-;)