「明日、ママがいない」 まとまらないまとめ

あまり気は進まなかったんだけど「明日、ママがいない」第1話を、放送の翌日にGyaOで観てみた。
ここ1週間、そのことばかりTwitterでつぶやいていたんだけど、きりがないからエントリにしようと思う。
(なんと8ヶ月ぶりの更新w)


このドラマに対する様々な意見がある。大別すると以下のようなもの。

ドラマの内容に対する異議
・あだ名が差別的。
・預けられている子どもたちは、虐待や遺棄された子どもたちばかりのような印象を与える。
・(職員の言動も含め)養護施設が誤解され偏見が強まる。
・今、実際に社会的養護を受けている子どもたちが傷つく。
・ドラマを見た人(特に子ども)たちからの、養護施設にいる子どもへのいじめを助長する。
・養護施設の職員や里親が萎縮する。
・子どもを預けている親が偏見に晒される。

ドラマの内容に賛同
・フィクションだと思ってみている。あれを本当だと思う人はいない。
・見て傷つくなら、見なければいい。
・放映中止を求めることは表現規制に繋がる。
・親が子どもと一緒に見て、本当のことを教えればいい。
・あの時間のドラマを子どもが見ている事が問題。
・子どもが、いじめをするのはドラマのせいではなく、親や学校の責任。
・実際に施設内虐待は起きている。
・児童養護の関係者がドラマに異を唱えるのは、自分たちを正当化するため。
・子どもたちが可愛そう。捨てる親が悪い。
・子どもたちの悲惨な状況が分かるから続けて欲しい。
・養護施設を考えるきっかけになる。
・子どもを大切にしようと思えた。
・感動した。泣いた。よいドラマだ。(大多数)
・おもしろかった。次回が楽しみだ。放映を続けてほしい(大多数)




40年以上も前のこと、私は母親から捨てられた。

とはいっても、それは養護施設ではなく、母方の祖母の家に置き去りにされたのだけれど。
(いきさつは別ブログのエントリ→ 「ネグレクト(1)」
http://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/archives/3618071.html

母が出て行った後、1週間ぐらい布団にくるまって泣いていた私に、祖母が言った「そんなだから、捨てられるんだ」って言葉。
今でこそ、「殺さないでくれて、ありがとう」「捨ててくれて、ありがとう」と笑って言えるようになったけど、そこまでたどり着くのに25年もかかってしまった。

かのドラマの感想には「ポストって名前は、本人が望んでつけた名前で蔑称ではない。捨てられたんじゃない、自分が捨てたんだという思いがこもっている(大意)」みたいな意見が散見される。

ドラマの中で、主演の少女がそういう台詞を言ってたし。
でもね、9歳の子にそう言わせたいのは脚本家だってこと。
簡単に言うなよと思う。
どれほど酷い扱いを受けても、自分から捨てるのは容易ではないよ。
「捨てたいけど捨てきれない」そういう葛藤を抱えている子どもも多いだろう。


「関心を持って貰うきっかけになればいい」という意見もあるけれど、私はそうは思わない。
今、社会的養護を受けている子どもたちは、そこに至った事情も様々で、ドラマのイントロダクション(http://www.ntv.co.jp/ashitamama/introduction/index.html)に書かれているような、虐待を受けた子どもばかりではない。傷つけないために、生きていくために泣くなく子どもを手放した親もいる。

制作側の誤解に基づいて作ったドラマを見て「可愛そうな子どもがいる」と分かった気になっているだけ。
「感動した」で終わらせないで、きちんと調べたり本を読む人がどれぐらいいるだろう。ドラマが終わっても関心を持ち続ける人がどれぐらいいるのだろう。


ドラマを視聴した直後の、このツイートを沢山の方が読んでくださったようだ。

一時の関心はすぐに忘れ去られてしまう。だけど、植え付けられた偏見は、ずっとずっと影響し続けてしまうのだと思う。かつて「孤児院」を恐れた私のように(昭和生まれの人は、この感覚が分かるかも)、自ら救いの手を拒む子どもがいないことを祈るしかないが。


「フィクションだと分かっているから、偏見など持つはずがない」という意見に、もう少しだけ反論させていただくと。

ここのところずっと読んでいたツイートには、「フィクションだ」といいながら同じ人が「こんな酷い事件もあった」と実際にあった事件を持ち出したり、「酷いのは、実際に子どもを捨てる親であって、ドラマではない」とか「簡単に子どもを捨てるのは酷い。施設に預けないで」なんていう意見もあった。

児童養護施設や施設に子どもを預けている親への偏見が醸成されつつある(というか、もう出来上がってる?)と思う。
意外と簡単に影響されてしまうもんですね。人っていうのは。

なんだかんだ書いたけど、「おもしろかった」という大多数の意見に集約されるように、描かれる側の心情を無視して、娯楽として消費する人達の多さにうんざりしているんだね。私。

以上。
まとまらないのは仕様です\(-_-;)


※ちなみに私は、施設内虐待があることを否定はしません。
https://twitter.com/t1akira/status/425529112111763456




■「明日、ママがいない」意見、報道まとめ

ドラマ「明日、ママがいない」第1話へ児童養護施設関係者からのツッコミ
http://togetter.com/li/616921

「明日、ママがいない」施設出身者の方々の反応
http://togetter.com/li/617131

「明日、ママがいない」漫画家、クリエイターなど創作を生業とする方達の反応
http://togetter.com/li/617121

日テレのドラマ「明日、ママがいない」への抗議問題。施設の子どもに対する「想像力の欠如」と「加害性」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140118-00031720/

日テレ「明日、ママがいない」 実の母親が育てられない「養子縁組の子ども」を育てる母親からのメッセージ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140122-00031853/

「明日、ママがいない」騒動で耳を傾けるべきは施設出身者の声
http://blogos.com/outline/78173/

『明日、ママがいない』問題について。作り手と受け手の想像力の相克
http://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/post_6694_b_4625728.html

「親に捨てられた子」と呼ばれて自尊感情は育つのか
http://ameblo.jp/sweetcocoamilk/entry-11751009141.html

表現と風評と想像力と
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20140118/1390018114

ドラマを創作するときの自由
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20140117/1389983342

児童養護施設グループホーム】本当はどんなとこ!?「明日、ママがいない」抗議、放送中止要請も
http://matome.naver.jp/odai/2138980261428740301

テレビ史の汚点になる前に、日テレは『明日、ママがいない』の放送中止か軌道修正を考えるべき!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38139

赤ちゃんポスト運営病院、日テレドラマに抗議へ
http://www.asahi.com/articles/ASG1J64S6G1JTLVB00T.html

【明日、ママがいない】全国の児童養護施設と里親会が日テレに抗議「人間は犬ではない」
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/21/mamagainai-kougi_n_4634833.html